2016/09/17

自転車保険の義務化と業者の売り込みが同時並行で進むこと

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保険未加入生徒は自転車通学禁止へ 大津の中学、市教委方針 : 京都新聞




という記事の紹介を頂きました。

自転車保険の義務化は近頃のトレンドです。

自動車と異なり、加害者がお金を持っていないリスク(信用リスク)が保険でカバーされているとは限らないため、自転車事故の被害者は、たとえ相応額の賠償が裁判で認められても、それを回収することが出来るとは限りません。

お金の回収ってのは本当に大変で、それを保険でカバーするというのは、出発点として私も支持しています。

ただ、保険というのは、どこまでいっても、負担の総量は変わらず、誰かが誰かのを負担する仕組み。

被害者が回収の苦労をしなくなることとは別に、その負担がどこにあるのか、その分担が適切は、常に考えなければなりません。

また、最近の保険の流れは「マナー向上」と絡めて語られますが、保険についてはは、古くからその存在により注意を怠る方向にドライブするという問題が指摘されています。

よく、保険をかけて事故を起こしても、そこそこ痛い額の手出しをしなくてはならない「免責額」というのが定められていることがありますが、これは、上記の問題に対処するための仕組みとして設けられているものです。

保険業者と自治体がタイアップすることの意味

今回気になったのは、一連の保険義務化の流れと平行して、自治体と保険業者がタイアップする動きがあることです。

直近では埼玉県のこれ。

埼玉県とau損保は協定を締結します― 自転車の安全利用や県の魅力PRなどを連携して取組 ― 

一見すると、県側に手出しなくしていろいろな協力を業者から得られる内容のように思えます。

しかし、このような県の協定と、上記のような学校レベルでの義務化のエンフォースメントが重なることには、ちょっとなあ、と思うところもあります。

冒頭の記事にあるように、例えば滋賀県の条例は、自転車保険を義務化したといっても、それに対する罰則はありません。したがって、それをエンフォースする仕組みが欠けていることになります。

しかし、学校に関しては別。今回、大津の教育委員会がこのような動きを取ることにより、少なくとも自転車を利用する生徒を含む家庭については、この条例が実効的なエンフォースメントを受けることになります。

さて、ここで、仮に特定の自治体が上記のようなタイアップを行うことで、当該損保について一定の「お墨付き」が得られる事実上の効果が生じたらどうでしょうか。

さらにすすんで、あまり考えられないのですが、学校が、「当校のルールを満たす保険業者はこれこれ」と指定してしまったら、どうでしょうか。

最近はちょっとわからないのですが、昔は、学校で使う服、靴、楽器etcといった機材について、特定の業者を学校がデフォルトとして用意し、そこから逸脱することは事実上選択肢として存在しなかった。そういう実態を経験した人は、多いと思います。

もちろん、例えば滋賀県の例で言えば、条例は保険への加入を義務化しているとしても、特定の業者を指定も推薦もしていません。

しかし、埼玉県のように、特定の業者と協定を結ぶ形を取ることは、事実上、一定の推奨効果があることは否定できないように思います。

競争を制約するような事実上の推奨が生じてはいないか

保険は強力な規制の下にある業種ではありますが、とはいっても、保険料については競争が働かなくては、消費者のためになりません。

しかし、そこにこのような事実上の推奨が生じてしまう場合、保険料についての競争は不十分なものになります。

極端な場合は、学校が高コストな商品(例えば、いろいろな「特典」「オプションサービス」がついた保険)を事実上のデフォルトとして提示することで、それ以降の生徒がそこに次々とロックインしてしまうことも考えられます。

人によっては規模の経済により安くなるというのを期待されるかもしれませんが、冒頭の少々の手出しなど、ロックインさせることによって今後得られる利益に比べれば、小さいことが多い(いわゆる「ティーザー」「おとり価格」)。

条例上は業者の競争に中立な内容であっても、学校の義務化の過程で、例えば県と協定を結んだ業者といった特定の業者に事実上誘導されることが仮にあるとすれば、それは、トータルで消費者のためにならない。

そんなことを考えたのでした。

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