2016/06/23

「自転車は車道が原則」と「自転車は車道を走らなくてはならない」は全く違う

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結構混同されてますよね・・・

自転車安全利用五則 自転車は、車道が原則、歩道は例外 警視庁




ご承知、近頃、いわゆる国策となった「自転車は、車道が原則、歩道は例外」

この論拠として挙げられているのが、道路交通法における自転車 (軽車両)の位置づけと、車両の車道通行原則です。

この説明については、上記リンクをご覧頂ければ分かると思います。

この説明自体は、警視庁の説明ですし、完全に正しいです。

しかし。

このことは、自転車の利用者が、法的あるいは道義的な意味において「車道を走らなくてはならない」「車道を走る努力をしなくてはならない」「車両を走ることが尊重され、歩道を通行することは慎まなければならない」ことを直ちに意味しません。

少なくとも、道路交通法の規定自体は、そのような要求はしていないと私は考えています。

ここには、ものすごーい隔たりがあります。

今日はそんな話。



原則ってなんだ?

原則という言葉が使われる場合には、必ず例外があります。

そして、法律において、このテクニックは、
Aという場合はこういうことが可能だが、それ以外は原則にかえる
という風に使われます。

また、このテクニックの使われ方は、各国の法律を作るお作法によっても違ってきます。

日本の立法は、民法を筆頭に、次のようなお作法で法律が作られるのが通常です。
  • 一般的・抽象的な規定を前におく これが原則となる
  • 特例(Aという場合)については、原則の後に「これこれの場合には~」と例外として設ける
道路交通法においても、

  • 車両一般について当てはまるルールが前の方に原則として
  • 自転車について当てはまるルールは後ろのほうに例外として設けられています。

もっとも、このようなテクニックを採らない国もあり、1つの法律にこんな感じでまとめるのではなく、利用者や場面によって別の法律をポコポコっと個別に作ってしまう国もあります。

これは立法のテクニック 原則に沿った行動を個々人に要求はしていない

プログラムの例えでいえば、これは"if - else"の構文に似ています。

ifに該当する場合は、例外としてある方向に分岐するが、それ以外は、elseの方向(原則)とされる。

道路交通法でいえば、上記警視庁の説明の通り

歩道に「普通自転車歩道通行可」の標識等があるとき。

13歳未満の子どもや70歳以上の高齢者、身体の不自由な人が自転車を運転しているとき。

道路工事や連続した駐車車両などのために車道の左側部分を通行するのが困難な場所を通行する場合や、著しく自動車の通行量が多く、かつ、車道の幅が狭いなどのために、追越しをしようとする自動車などの接触事故の危険性がある場合など、普通自転車の通行の安全を確保するためにやむを得ないと認められるとき。
これらの場合を"if"として定めています。

これらに該当する場合、自転車運転者は、歩道通行(ただし、歩行者に配慮する等の一定のルールに従う必要がある)と、原則通りの車道通行を選ぶことができることになります。

"選ぶことができる"の意味 - 選ぶのはあなた!「原則に沿わなくてはならない」ということは、要求されていない

このように、道路交通法は、一定の場合について「歩道通行を選ぶことができる」という内容を、立法のテクニックの上での例外として定めています。

しかし、このように"if"または例外であるからといって、自転車利用者=あなた が、その選択肢を示された際に「車道通行をしなければならない」ということにはなりません。

"if"にあてはまった以上、あとはあなたが自由に車道/歩道を選ぶことができるのです。

もちろん、ifにあてはまらなかったら別ですよ。

※細かい話ですが、実際の所、歩道が設置された日本の道路のうち多くが普通自動車歩道通行可の指定がされており、そうでない箇所も、かなりの部分で車道通行が安全とは言えず、実際上、"if"に当てはまる局面はかなり多いと考えられます。

歩道を通る場合には、歩道のルールに従う必要がある

当たり前のことですが、歩道を通ることを選んだ場合、歩道のルールに従う必要がでてきます。

このルールについては、同じく警視庁が分かりやすく説明しています。

自転車安全利用五則 歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行 警視庁




基本的には、車道よりを徐行。歩行者が優先です。

ルールを守れば、歩道を通ることをちゅうちょする必要はない

まとめます。

歩道を通るには、一定の要件 "if"を満たす必要があります。

そして、歩道を通る場合には、その歩道のルールに従う必要があります。

しかし、その両方を満たしていれば、歩道を通ることをちゅうちょする必要はありません。歩道を通っている人が「けしからん」ということにもなりません。

現実問題として、日本の車道は、インフラ、そしてモータリストの意識共々、全ての自転車利用にとって安全とはおよそ言えません。このことは異論がないと思います。
昨日、こんな看板が話題になっていました。内容的にも正しいですし、歩道の上で自転車のルール違反が目立つことから、歩行者への配慮を促していることは、大切なことだと思います。

でも、この看板によって、本来であれば車道を走るのが不適切な場面("if"に当てはまる場面)においても、車道に出るように誘導してしまったとしたら、それは大変なことだと思います。
私の地元の鹿児島での事件です。
この道路は、地元民のほとんどが、自転車で車道を走りたいとはおよそ思わないような場所です。

被害者の属性は分かりません。もしかしたらロードバイク乗りで車道に慣れていたのかもしれません。

でも、もしかしたら、そうではないかもしれない。警察の「車道が原則」のキャンペーンを誤解して、本当は歩道を走りたいのに、真面目に車道を走ることにしたのかもしれない。

その結果がこれだったとしたら、悲しすぎると思いませんか?

繰り返します。

ルールを守れば、例外であっても、歩道を通ることをちゅうちょする必要はない
法的にも、道義的にも、"if"にあてはまる以上、そんなことは要求されていない

と、私は考えています。

そして、仮に「車道が原則」のキャンペーンが、"if"の場面においても車道を走らなければならないという誤解を生んでいるとすれば、そしてそれが事故の可能性を高めているとすれば、それは政策として適切でない。否、より強い言葉を使えば、そのような誤導は許されないと考えています。

※6月22日 この点については、本来、警察等の資料を踏まえ「車道は原則」が提唱された経緯についてきちんと裏取りをしたいと考えていますが、現時点ではできていません。

したがって、上記内容についてはコメント・批判等ございましたら(別にこの記事に限った話ではありませんが)大歓迎いたします。

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