2016/01/25

港区自転車シェアリングでキャノンボールの可能性とリーガルリスク【ネタ記事】

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元記事はこちら。
Guy rides NYC Citi Bike across the USA… and cops $1,200 late fee | road.cc




ニューヨークのシェアサイクルを借りてロサンジェルスまで3,900マイル=6,200キロを走破するも、1,200ドルの延滞料金を払うことになったということ。

もっとも、トラブルは一度のパンクだけだったそうです。

日本のシェアサイクルでキャノンボールは可能なのか?

これを読んで、こんなアホな事を思いつきました。


この人は1,200ドルの請求だけで済んだわけですが、お金を払えば日本のサービスでも同様のことが可能なのだろうかと。

例えば東京大阪キャノンボール。24時間+戻る時間だけなら、そこまでお金がかからないんじゃないのかな?なんて。

そこで、日本のシェアサイクルのベンチマークとして、株式会社ドコモ・バイクシェアが運営する港区自転車シェアリングを選択。どのような問題がありうるのか、簡単に考えてみました。

ディスクレーマー

結論として、詐欺罪の成立が問題になり得る、債務不履行(契約違反)である上に、またビジネス的に想定されていない利用であるということになります。
運営会社が事前に承諾していない場合、トラブルや紛争が発生する可能性は否定出来ません。その場合についてはご面倒を見かねますので、その旨ご承知おきください。

料金表と利用規約の記載


個人向けプラン
港区自転車シェアリング「ご利用料金・時間」から引用
1回会員、月額会員については、一度の利用時間が24時間以内、そして一定時間ごとに108円の延長料金がかかる仕組み。

これに対し、1日パスの場合には、日付をまたぐまでの間、定額料金になってます。

利用規約には次の記載があります。
第4条 (利用条件など)
1.入会契約において、会員は、当社が指定する契約タイプ及び支払方法から1つを選定し、契約を行うものとします。
2.個人会員又は法人指定利用者は、前項に基づき選定された契約タイプ及び支払方法に応じて、第5章に定める料金を支払うものとします。
利用規約には契約タイプ及び支払方法は直接記載されていませんが、Webで開示された上記3つの分類がこれらに該当すると思われます。
第21条 (料金)
1.料金とは、個人会員又は法人指定利用者がシェアリング自転車を利用するにあたり、当社に対して支払う基本料金、延長料金、その他の料金をいうものとします。
2.当社は、それぞれの額又は計算根拠を料金表に明示し、当社所定のWebサイトにおいて公表するものとします。当社は、料金表を変更する場合には、変更日の1週間前までに当社所定のWebサイトにて公表するものとします。
これも上記同様、Webに公表された料金を指していますね。
第22条 (基本料金)
基本料金とは、第4条第1項で選択した、または第5条第1項に従って変更された契約タイプに従って、月または日、時間など契約タイプにより定められたサービスを受ける期間に応じ、支払う基本料金をいうものとします。
第23条 (延長料金)
1.延長料金とは、個人会員又は法人指定利用者が借り受けたシェアリング自転車の契約タイプ毎に定められた初期使用時間を超えて、個人会員又は法人指定利用者がシェアリング自転車を使用した場合に支払う延長料金をいうものとします。
2.延長料金は、前項に定める初期使用時間経過時から、個人会員又は法人指定利用者が第15条の入庫手続きなどシェアリング自転車の返還が完了するまでを対象期間として課金されるものとします。
22条がキモになっており、延長料金の支払が定義されています。
初期利用時間を超えた時から返還完了までの延長料金を支払うことに。

さて、ここで問題になるのが、

  •  (1回会員、月額会員=従量料金の場合)24時間の利用上限を超えた場合に何が起きるのか
  • (1日パス=固定料金の場合)日付をまたいだ場合に何が起きるのか
です。

これについては、次の条文を参照することになるのでしょう。

実は、この規約自体には、明示で特定の返還時期に返還すべしという条項はありません。

ただし、このような貸借に関する契約については、一定の期限の定め(場合によっては条件の定め)があり、それに従うのは当然のことと考えられています。

実際、上記料金表には「24時間」ないし「日付をまたぐまで」という記載があり、これが契約上も期限になると考えられます。

第31条 (シェアリング自転車が返還されない場合の処置)
1.当社は、各契約タイプに定められた利用可能時間を超過しても個人会員又は法人指定利用者がシェアリング自転車を返還せずかつ当社の返還請求に応じないときや支払いに遅滞したときまたは個人会員又は法人指定利用者の所在が不明などの事情により、シェアリング自転車が乗り逃げされたものと当社が判断したときは、入会契約を解除するとともに刑事告訴を行うなど法的手続の措置をとることができるものとします。
2.前項に該当することとなった場合、個人会員及び法人指定利用者は、返還されるまでの利用料金、シェアリング自転車の回収および探索に要した費用などの他、当社に生じた一切の損害を賠償する責を負います。
3.当社は、天災地変その他の不可抗力の事由により、サイクルシェアリングシステム運営時間を経過しても個人会員又は法人指定利用者からシェアリング自転車が返還されなかった場合は、これにより生ずる損害について個人会員及び法人指定利用者の責任を問わないものとします。この場合、個人会員又は法人指定利用者は、直ちに運営事務局に連絡し、その指示に従うものとします。
そして、31条1項に、「利用可能時間を超過し」た場合の措置について記載されていますが、これは上記の通り(従量料金なら)24時間が上限。

したがって、ここから先は、31条1項、2項の規定により関係が決せられることになります。単に延長料金を払えば済む話にはなりません。

また、この時点で契約解除も可能になります。
第16条 (個別契約の解除)
当社は、次の各号の一つにでも該当する場合は、会員及び法人指定利用者にシェアリング自転車の返還を求めることができるものとします。
(1)借受時間中において、シェアリング自転車の使用不能またはサイクルシェアリングシステムの不具合、その他の理由により、シェアリング自転車の貸し渡しを継続できなくなったとき。
(2)個人会員又は法人指定利用者が借受時間中に本規約その他の当社との間の契約の約定に違反したとき。

利用可能期間を超過して返還しない場合の関係

民事について

まず民事の法律関係について。これは31条2項で規定されています。
返還されるまでの利用料金、シェアリング自転車の回収および探索に要した費用などの他、当社に生じた一切の損害
について賠償義務を負います。

もっとも、本件については若干ゆるい規定だなあと思いました。

というのも、借主が「堂々と」、つまり、会社に現在の位置を伝え、自転車も壊さず、また返すことを言明して借り続けた場合、返還までの利用料金以上の損害があるのか、微妙だからです。

むしろ、自転車が常時貸し出されている結果、「遊び」の時間がなくなり、いつもより売上がでていることになる・・・

このような貸し借りの契約の場合、借家などが典型ですが、「利用料金の倍額」といった約定遅延損害金(やくじょうちえんそんがいきん=契約で定めた損害賠償)を入れるのが通常です。

それが入っていないのは、ちょっと意外感がありました。

債務不履行(さいむふりこう=契約違反)ではありますが、料金を払い続ければそれ以上の大幅な損害が出るのか、ちょっと怪しいなあと。

もっとも、様々な項目を入れて膨らませることは不可能ではないので、この点はもちろん絶対とは言えません。

刑事について

31条1項では刑事告訴も~と書いてあります。

ただ、ここでも、「堂々と借りた」場合の関係が問題になります。というのも、返すつもりはあるが、借りたモノを返さない、それはただの民事の問題であり、窃盗、横領といった刑事罰の適用はできなくなるからです。

もっとも、これはあくまで最初の時点で利用時間内に返す気があった場合の話。
最初から24時間を超えて借りる前提で借りた場合、詐欺罪の成立が問題になり得ます。

というのも、貸主は、24時間で返す約束に従う前提で貸しているところ、最初からそれを隠して借りた場合については、「だました」という関係が生じてくるからです。

(実はいろいろ細かい論点はありますが、本稿の範囲を超えるのでこの辺で。)

結論

  • 最初から24時間以上のロングライド目的で借り出した場合には詐欺罪が問題になり得る。
  • 債務不履行にもなるが、延長料金以上の損害がどれだけ生じるかは未知数。
  • てか迷惑だからやめれ。
・・・といいつつも、堂々と申し込んで一つの企画としてやる分には、結構面白い話ではないかとも思ったのでした。

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