2016/01/14

UK Based Trust/Confidence Model vs US Based Trade Model キャピタルマーケットの効率性とSky/Tinkoffのモデルの対称性

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突然ですがこういう話です。

前々から、スポーツの組織におけるFiduciaryの概念が持つ意味に興味がありました。これが無ければ、真に専門特化したプロフェッションがマネージし、かつ長期的な高みを目指すハイレベルな組織は出来上がらないのではないか。

これは別に私独自の、あるいはスポーツ独自の問題ではなく、コーポレート・ガバナンス/キャピタル・マーケットの効率性の問題としてずっと議論されてきた古典的な問題です。




様々な考え方はありますが、ざっくり言うと、近年では、情報が開示され、また取引のコスト(会社で言えば株式取引の)を下げ、その情報を反映して各取引参加者が長期的な利益の最大化を図れば、効率よく生産と分配がされるはずだ・・・という考えが強かったと認識されています。

株式会社でいえば、可能な限りいつでも株を売れるのが望ましく、人事についても、その場その場で次々と首のすげ替えが出来る方が望ましい。
雇われるマネージャーの側からも、会社は同じ発想により次々と取り替えられる箱である方が望ましい。

これが最も速やかに発展したのはアメリカ合衆国。US-Based Trade Modelと呼びますが、この一方の理念型に対し、イギリスを始めとするヨーロッパには、かならずしもそういう伝統はありませんでした。

研究によれば、戦後はおろか、1980年代まで、イギリスでこのような高い流動性と個性のない投資家による保有が確立したことはなく、一定の支配株主による-しかし会社への高いFiduciaryを備えた-会社の運営が相当程度残っていた。

これをUK-Based Trust/Confidence Modelと呼びましょう。あるいはFiduciary Modelとも。

金融というのは

  • 資金の出し手のお金の使い道のタイムスパン(今日使いたい、明日使いたい・・・○年後使いたい)
  • 資金の使い手のタイムスパン(今日の支払に使いたい、明日の投資に使いたい・・・)
の「ずれ」を捉えて、その仲立ちをする仕組みということができます。

このうち、Trade Modelは、資金の出し手がいつでも抜け出せることによるプレッシャーにより、会社の効率的な運営が確保されるという発想。株主も一人一人はごく少数しか持っていないので、積極的に内容面に口出しすることはありません。マネージャーも、短期的な利益を出して株価を支えることが、自分のボーナスに繋がります。

ここには、対話と長期的な利益の設定というプロセスはあまり想定されていません。

これに対し、Trust Modelは、そのような無言のプレッシャーだけでは無い。少なくとも一定の安定/支配株主は一朝一夕でExitする前提で行動していない。そのような者を中心に、利益の方向を一にする者達が対話し、長期的な利益を設定して、そこに向かって途中でドロップすることなくコミットしていく。

大きな違いは、目標が設定されるプロセスとその目標のタイムスパン。

タイムスパンが短ければ、それに向かって短期的な利益を得るための作戦になる。そして、その方策は概ねトップダウンになる-コーディネーションは不要。

これに対し、タイムスパンが長ければ、短期での利益は必ずしも不要であり、その方策はFiduciaryを有する者らによるコーディネーションによって決せられる。

以上はあくまで理念的な二分法であり、全てに当てはまる話ではないのですが、スポーツ組織のあり方やスポーツイベントのマネジメントも、大きくこの2つのモデルで分類できるのでは無いか、とぼんやり考えていたのです・・・が。

ここで極めて鋭い分析を頂きました(いつもご示唆を頂き大変ありがとうございます)。


確かに仰る通り、ティンコフ氏は、US-Based Trade Modelの典型と見ることが出来るでしょう。

これに対し、Skyのモデルは、いみじくも母国の伝統を反映したFiduciary Modelと見ることができるのではないか。

最後に。この2つのモデルのうち、一度はUS-Based Trade Modelが席巻したのですが、2008年以降の金融危機以後、これへの疑念が炎上。

様々なレベルで、Fiduciaryの意義についての議論がされています。
直近の日本ではこれとか。なお本稿のUKの議論の元ネタはここ

ティンコフ氏は失敗したのかもしれませんが、スポーツの文脈でも、この議論は尽きないことでしょう。

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