2016/01/16

いわゆる自転車レーンに関する道路標識等の根拠と過失相殺

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最近各地で設置が進んでいる自転車レーンですが、この表示方法のうち、路上ペイントのみの方法(普通自転車専用通行帯ではないもの)については、法令で明確な決まりはありません。

以下、備忘録も兼ねた簡単なまとめ。

・・・ってのを1年以上前にメモ書きして中途半端だなあと放置していたのですが、

東京国道事務所/安全・安心/自転車通行空間の整備




こんなによくまとまったサイトがありました。

法令に根拠がある表示等の例

道路標識、区画線及び道路標示に関する命令(国土交通省令)
※具体的な標識図は別表2


などが挙げられます。

道路標識に関する命令では、別表2で「普通自転者専用通行帯」(327の4の2)が定められています。これは道路交通法20条に根拠を有するものですが、あくまで標識のみ。
路上ペイントはここには規定されていません。

法定外表示について

このような自転車通行に関する路上ペイントはいわゆる法定外表示等と呼ばれています。
法令上の具体的な根拠はありません。

警察庁は、平成26年の1月、法定外表示一般についての指針(通達)を出し、その運用について各地方の統一を図っています。

また、自転車ナビラインについては、安全で快適な自転車利用環境創出ガイドラインが法定外の路面標示の扱いにおいて参照されています。

過失相殺への影響

ここがちょっとよくわからんのです。

法定外表示について述べた判決として、東京地裁平成23年2月3日があります。

ここで「表示自体には一定の行為の禁止、制限又は一定の行為をなすべき義務を課す意味はない。」と述べられています。法定外表示に法令上の根拠がない以上、従う義務は、この表示自体からは生じません。

しかし、過失相殺において、過失と評価される事情は、なにも個別の法令に違反する「そのものズバリ」の行為に限られません。このような個別法令への違反はなくても、そのときの状況において過失という評価の根拠とされることはあります。

本件は、この交差点で発生。手前方向から奥の首都高入り口へ侵入しようとした自動車が、奥から赤信号無視で右折してきた対向車と衝突したという内容です。

判決では、事故が交差点内の白線上で起こったとされています。
もっとも、図が省略されていたため、正確なところは不明ですが、おそらくこの写真の手前の白線上で起こったのではないかと推測。



裁判所は、対向車が赤信号無視で進入してきたことを認めた上で、対向車側からの過失相殺の主張に対し、次のように判示しました。

第1審被告らは、本件事故発生につき、Aに①走行区分違反、②合図履行義務違反、③右折の際の徐行義務違反の過失があると主張する。
しかし、信号機による交通整理の行われている交差点において、青色信号に従った者と赤色信号を看過した者との間で発生した事故に関し、青色信号に従った者に過失が認められるのは極めて限定されるというべきであり、第1審被告らの主張する点をAの過失と評価しうるのか疑問がある。また、①本件実線は何ら法的義務を課するものではないこと、②飯倉入口に進入するに当たって第1審原告車両は進路を変更しており、その際第1審原告車両がウインカーを点灯させたことを認めるべき確たる証拠はないが、第1審原告車両と第1審被告車両との間の見とおしは悪く、第1審原告車両がウインカーを点灯させても視認することはできないし、仮にウインカーを点灯させていなかったとしても赤色信号を看過して右折進行してきた第1審被告車両に対する過失とは評価しがたいこと、③飯倉入口に進入するに当たって第1審原告車両は進路を変更しているが、右折ではないため、徐行義務違反があるとはいえないことから、いずれにせよ本件事故の発生についてAに過失があるとは認められない。
要するに、
「俺も悪かったが、この白線の上に踏み込んできたのも悪いだろ!」という主張。

これに対し、裁判所は、

  • そもそも赤信号無視と青信号に従った者との関係では過失相殺は限定される
と前置きした上で、
  • この白線は法的義務を課さない
とし、この行為を過失相殺として取り上げることはありませんでした。




・・・

気になっているのは、これをもって、
  • 法定外表示=自転車で言えばナビライン=に従わなくても過失相殺の対象にはならない
と言い切っていいか、という点です。


というのも、本件は、上記の通り赤信号無視vs青信号という言ってしまえば明々白々な事案。裁判所も、「青色信号に従った者に過失が認められるのは極めて限定される」と前置きしています。

これに対し、もう少し微妙な案件で、かつ法定外表示がそこを通行する当事者にかなりの「信頼」を抱かせてしまうケースの場合、法定外表示に従わなかったことが一切考慮されないかは、結構微妙なのではないか?と考えてしまったのです。

ナビライン、どうでしょうかねえ。

現時点では手元の判例データベースでしか調べられていませんので、もう少し考えてみようと思います・・・

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