2015/12/11

2020年東京五輪の自転車競技会場決定/自転車走行環境のコミットメント?

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自転車競技の会場決定

Tokyo 2020 Cycling Venue Masterplan unveiled




2020年 東京オリンピックにおける自転車競技の会場については、当初見込まれていた都心開催から費用不足を理由とする紆余曲折がありましたが、12月9日をもって、正式に妥結したとのこと。

自転車競技に含まれる種目のうち、トラック系とMTBについては伊豆のサイクルスポーツセンター、ロードマスドレースとタイムトライアルについては皇居外苑(UCIの発表ではImperial Palace Gardenをスタート/ゴールとする/組織委員会の日本語発表では皇居外苑を会場とする)、そしてBMXについては有明の特設会場で行われるということです。

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Tokyo 2020 Olympic track cycling to be staged 120km away from capital - Cycling Weekly



海外のメディアでは、やはり東京からかなり離れた地での開催であることを強調する向きがあります。

UCIのクックソン会長は、次の通りコメントしています。
I’m convinced that this type of partnership approach, underpinned by a longer term vision, can achieve a win-win for the Olympic Family, Host Cities and International Federations such as the UCI.
このWin-winというコメント。外やらの推測ではありますが、UCIはトラック・BMXで譲歩したものの、皇居外苑にロードレースのゴールを得たことは、かなりの戦果として評価しているのではないかと。

というのも、元々のロードレースのコースは、皇居前出発、武蔵野の森公園ゴールだった訳ですが、UCI的にはここはおよそ「あり得ない」提案であったと想像するからです。

前回2012年のロンドンオリンピックでは、ロンドンのバッキンガム宮殿前を発着点とするコースが設定されました。当然観客動員の面でも圧倒的な違いがありますし、オリンピック後も、その前例を生かし、Ride Londonという形で年一度のイベントが恒例となっています。自転車競技のプレゼンスを高めるのがUCIの使命であるとすれば、このようなロンドンでの大戦果に比較すると、東京の提案が極度にレベルが低いものと受け止めていたことは想像に難くありません。

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しかし、今年2月以降、当初の提示とは異なる費用節減の方針が出されたことで、この点が交渉材料になった。結果、ロードレースについては、皇居前発着というロンドンと一応同等のコンディションを確保することが出来たという流れなのではと推測しています。

トラック/MTBについてはやはり不利な結果と言わざるを得ません。

しかし、他方で、東京の都市環境を考えるに、残念ながら(元台東区民としての実感を踏まえ)トラック/MTBについてはおよそ身近なスポーツとは考えにくい。周辺部を除き、首都圏の住民のほとんどは、これら競技を自身が行う前提に欠ける。
これに対し、ロードは、都心居住者でも何らかの形で競技人口を支える母数になり得る。

そういう意味で、戦略的に見れば、ロードへ最大の注目を集めることは合理的ではないでしょうか。

費用には限りがある。その中でのWin-Winの妥協点としては評価できるのではないかと思っています。皇居前発着は、東京マラソンですら実現できてないのですから。

東京都の自転車走行環境へのコミットメント

さて、この決定を発表するUCIのコメントには、少し気になる下りがあります。和訳を付しますが、解釈上ポイントになる点については敢えて英語で残します。
As part of plans to promote every day cycling in Tokyo, the Tokyo Metropolitan Government (TMG) is working on the development of dedicated cycling routes in the city and Tokyo 2020 will work closely with TMG and the UCI to ensure that the existing commitment to create 400kms of cycling infrastructure will be implemented as part of the 2020 Games legacy.
(和訳)東京での日々のサイクリングを推進する計画の一部として、東京都は専用の自転車道(dedicated cycling routs)を都市内に整備することに取り組んでおり(is working)、また東京2020【前の文脈により組織委員会のことと思われます】は、確約済みである400キロメートルの"cycling infrastructure"の設置について、2020年オリンピックの遺産の一部となるべく、東京都とUCIと緊密に連携して取り組む(will work)ことといたします。

このうち、後段 - 確約済みの400キロメートルの"Cycling Infrastructure"については、この400キロメートルという数値目標から、次の政策を指しているものと理解できます。
「自転車推奨ルート」の整備について|東京都




ここから読み取れるのは、
約400キロメートルの自転車が走行しやすい空間
を整備するということであり、この取り組みの具体的なポイントとして、
1) 国道・都道・区市道等の区別なく、自転車が走行しやすい空間を連続させ、より安全に回遊することのできる自転車推奨ルートを設定2) 外国からの来訪者も含め、誰もが大会の雰囲気や観光地のにぎわいを自転車で楽しめるよう、車道の活用を基本に、東京の道路事情や交通事情に応じて、普通自転車専用通行帯(自転車レーン)や自転車ナビマーク・ナビラインによる走行位置の明示などを実施3) 各区市の自転車ネットワーク計画等の対象路線、自転車シェアリングのステーション位置なども考慮し、ルートを選定4) 東京都が本年4月に創設した補助制度等により、技術面に加え、財政面を含めた支援を強化し、区市道における整備を促進
という点が挙げられています。

要するに、後段の"Cycling infrastructure"は、自転車ナビマーク・ナビラインを含んだ内容といえるでしょう。この部分について、東京都が新たなコミットメントをしたとは言いにくいように思えます。

気になるのは前段です。

[T]he Tokyo Metropolitan Government (TMG) is working on the development of dedicated cycling routes in the city
is workingの意味については、現にやっているという意味のほか、近い将来にやる、という意味もありますが、いずれにしても後段のwillと比較して、意思の要素がやや薄いと理解されます。

他方で、この"dedicated cycling route"、特に"dedicated"は、"Cycling infrastructure"とは大きく意味が異なります。後者がかなり広い概念であるのに対し、この"dedicated"には専用の、という意味がある。典型的には分離された自転車道が想定されます。上記「自転車推奨ルートが予定する整備=車道の併用=とは、かなり異なるニュアンスを感じるところです。

この"is working"の意味にもよりますが、仮にこの交渉により東京都が何らかの譲歩をし、その内容が上記文言に含まれているとすれば、既存の計画の+αとして"dedicated cycling routes"が俎上に上がったとも推測できます。

この点の交渉は残念ながら外部からは窺い知れません。後段はともかく、前段"dedicated cycle routes"について何か積極的なコミットメントがあったのか、ここは非常に気になるところです。

ありそうな内幕としては、文言はこのように合意しておいて実際は解釈を曲げて有名無実化するというテクニックを使ったのかもしれません。常日頃から日本人はおよそ言葉が有する意味についての真剣さが足りないと思っており、不誠実なやり方と思いますが、お役所仕事の一つの洗練されたテクニックであることは確かです。

 東京都においては、この文言に即した具体的な説明が求められるように思えます。

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