2015/07/28

アルプス(5)  VAM (平均登坂速度)/心拍/パワーメーターで実力を丸裸にする

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アルプスでは日頃の生活ではあり得ないほど自転車漬け。具体的には次のようなスケジュールでした。
  • 初日 Galibier
  • 2日目 Izoard - Agnel - Izoard
  • 3日目 500メートル程度の登坂を伴うリカバリーライド
  • 4日目 Bonette
  • 5日目 Sabot
  • 6日目 Alpe d'Huez(裏から)
  • 7日目 休み
  • 8日目 L’Etape du Tour
  • 9日目 休み
  • 10日目 Telegraphe - Galibier - Telegraphe
  • 11日目 Alp d'Huez
Etape終了後にパワーメーターの電池が切れてしまいましたが、それ以前はパワー、心拍、GPSによる登坂距離の全てがモニタリングされています。

このようにまとめて自転車に乗ったことは過去に例がないので、私は一体どの程度の実力なのか、検証してみることにしました。

Michele ferarri博士のVAM概念

参考にしたのはこのブログ - Velo City / VAM 平均登坂速度

もっとも、この記事の元ネタであるリンクは切れてしまっているので、適切なソースを探すところから始めます。安直ですがまずはWikipedia(en)の記事から手がかり。

提唱者とされる"かの" Michele Ferrari博士(フェラーリ博士)による短い記事がこちら(訳文は私)。
Speed parameters, for example, are too much influenced by external factors such as wind, temperature, the course itself, tailwind from other riders etc. 例えばスピードは風、気温、コースや他のライダーからの追い風といった様々な要素に影響を受けすぎている。
It is of course possible to obtain more precise information from individual time trial results, but these are nonetheless influenced by the course and the wind. Climbs, however, can give much more useful data, especially for grades in excess of 7-8%, since ambient conditions have less effect since speeds are much lower than on the flat. 個人タイムトライアル(ITT)の結果からより正確な情報を得ることはもちろん可能だが、これもなおコースや風の影響を受けている。しかし、登坂は、より有用なデータを与えてくれる。特に斜度7,8パーセントを超える場合は。なぜなら、スピードは平地よりも遅いことから、周辺環境の影響を受けにくいからだ。
For example, if the Colombian Lucio Herrera (one of the great climbers of the 1980s) took 29’30” to cover an incline of 830 meters, it means he would have covered the incline at a ‘speed’ of 1688 meters/hour. たとえば、Lucio Hererra (1980年代の偉大なクライマーの一人)が830メートルを登坂するのに29分30秒かかったとすれば、1時間あたり1688メートルの坂を登る"スピード"があるということになる。
It is also essential to consider the altitude of the climb itself. Climbing an incline of 800 meters at between 200 and 1000 meters above sea level is very different from an equivalent climb between 1500 and 2300 meters because of the reduced oxygen available at the higher altitude. 標高を考慮に入れるのも重要だ。海抜200メートルから1000メートルの登坂は、1500メートルから2300メートルの登坂は全く異なる。なぜなら高度が高くなるほど使用できる酸素が減るからだ。

今回のアルプス・ツアーの環境

今回走行したアルプスは、最大高度2800メートル~2000メートル、平均斜度6~8%の坂が最大20キロ程度続くという理想的な環境が揃っており、海抜によるばらつきも相応に小さい。この指標による測定を行うにはもってこいの場所であると言えるでしょう。
この概念はTDFを勝つために利用されたのだから当然といえば当然ですが。

また、当たり前のことですが、疲労度によってその日のパフォーマンスは全く異なります。

これは記録からも明らか。例えばL’Etape du Tourの日は前日に十分な休養を栄養を取り、さらに当日は"High 5"というスポーツドリンクメーカーの指南書(下記)に従い、文字通り大量かつ様々なサプリメントを摂取をした。
その結果、2つ目のGlandon峠までかなり高い心拍数を維持できました。
反面、例えば最終日のAlpe d'Huezでは、どうあがこうにも心拍数170に一瞬到達するのが関の山。このような疲労度による比較も試みることにします。

プロのVAM

プロのVAMは、例えば先日行われたAlpe d'Huezのデータから簡単に推計してみることができます。

http://www.letour.fr/le-tour/2015/us/stage-20.htmlより

この日最速で登坂したのはナイロ・キンタナの39分22秒とされています。
wikipedia(en) Alpe d'Huez より。このデータには問題があります。登坂距離14.54キロメートルのデータとされており、このタイムもどの区間で測定されたのかも明らかではありません。他方で上記プロファイルはTDFの公式資料です。この公式プロファイルに対応するタイムの一次資料を探そうとしましたが、すぐには見つかりませんでした。これは厳密に比較できない性質のものですが、これに起因する差は、プロ選手のすごさを理解するための簡単な推計という目的から、ご容赦頂ければと思います。
余談ですが、Wikipediaにおいて、キンタナより記録の上位は、いずれもドーピングを認めた/認定されたか、ドーピング疑いの人物ばかりという注記があります。ははは・・・

上記プロファイルによると、標高差は1125メートル。これを39分22秒で登ったということは、

1125 x 3600 / (39 x 60 + 22) = 1714.64

という結果になる。これがキンタナのVAMということになります。

注意すべき点/斜度と海抜

マンガ「のりりん」の第8巻に次のような記載がありました(下線部は筆者)。


途中に平地や下りがそうなかった場合 斜度が緩くてもキツくても 走った距離に拘わらず 登った高度は同じになるってことだ
1時間で850m登れりゃホビーレーサーとしては立派 1000メートルならホビーレーサーの理想 1200ならプロレベル入り口って感じかな 
後段についてはそうなのかな~と思いますが、前段の「斜度が緩くてもキツくても」という点は、フェラーリ博士の定義からはやや正確さを欠くように思えます。
なぜなら、フェラーリ博士は、一定の斜度以上、斜度7~8% を超える場合は特に、という留保を付してるからです。
追い風といった外部環境の影響を受けにくいためには、一定以上の斜度が必要になる。「斜度が緩くても」という点には、一定の下限があるように思えます。

例えば、StravaのMt.富士ヒルクライムのセグメントを見てみます。


これによると、1つの目安とされる1時間30分を切るライダーは、VAM812程度ということ。しかしこの平均斜度は5%しかありません。レース環境にもよりますが、この812という数値は、もう少し斜度の高い坂では低めに出る傾向があるのかもしれません。

また、海抜も問題になります。もっとも、この点については、Mt.富士ヒルクライムと今回のアルプスの環境は近似しています(1000メートル程度からスタート、2000メートル程度まで登る)。

私の記録は全てStravaで管理されており、そこではセグメントの登坂距離に基づくVAMが自動的に計算されます。また、その際の心拍数やパワーと比較することで、その際どのような調子で登っていたのかも明らかすることが可能です。

というわけで、次回以降この点について簡単に見てみようと思います。

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