2016/01/26

傘固定器具の問題点

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「さすべえ大丈夫?」改正道交法施行で問い合わせ相次ぐ… 大阪府警は「使用控えて」 (http://cyclist.sanspo.com/)

道路交通法の改正に伴う安全講習に関する規定の適用後、しばしば話題になる傘固定器具。

2016/1/25 本記事について最近多くのアクセスを頂くため、下記のフォローアップの内容を取り込んで修正しました。

2015/7/30 この点についてのフォローアップ記事を掲載しています。
普通自転車に関する規定の適用については、警視庁は今のところ考えていないという内容。

フォローアップ記事「傘固定器具」による傘差しは車体の一部にならないというのが警視庁(東京)の見解こちらも併せてお読み頂ければと思います。


この傘固定器具について、一体どのようなルールが適用になるのでしょうか。

積載の制限に関する規定との関係(1)

上記記事は大阪府に関する記事。ルールについても大阪府の道路交通規則が参照されています。

(引用)
 道交法や大阪府道路交通規則には、視界を妨げるような車両の積載物などについて規定があり、府警は「傘スタンドに傘を取り付けた場合、傘の幅が(自転車の幅より)0.3mはみ出したり、高さが2mを超えたりすると違反」と説明する。
関連する条文は下記の通りです。

道路交通法
(乗車又は積載の制限等)
第五十七条
2  公安委員会は、道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要があると認めるときは、軽車両の乗車人員又は積載重量等の制限について定めることができる。
これを受け、大阪府道路交通規則は次の通り定めています。

大阪府道路交通規則
(軽車両の乗車又は積載の制限)
第11条 法第57条第2項の規定による軽車両の乗車人員又は積載物(積載装置を備える自転車及び自転車により牽けん引されるリヤカーの積載物に限る。以下この条において同じ。)の重量、大きさ若しくは積載の方法の制限は、次の各号に掲げるとおりとする。

(4) 積載物の長さ、幅又は高さは、それぞれ次に掲げる長さ、幅又は高さを超えないこと。
ア 長さ 積載装置の長さに0.3メートルを加えたもの
イ 幅 積載装置の幅に0.3メートルを加えたもの
ウ 高さ 2メートルから積載をする場所の高さを減じたもの
(5) 積載物は、次に掲げる制限を超えることとなるような方法で積載しないこと。
ア 積載装置の前後から0.3メートルを超えてはみ出さないこと。
イ 積載装置の左右から0.15メートルを超えてはみ出さないこと。
(平21公委規則16・全改)
一応罰則もあり、2万円以下の罰金が科せられます(道路交通法121条1項7号)

もっとも、この大阪府道路交通規則の方は、大阪府のルール。他都道府県で同種の定めがあるかは当該自治体次第です。

ただし、この点は、従来も存在した問題であり、今回の安全講習に関する改正とは無関係。特に規定が厳しくなったという関係にはありません。

安全運転義務との関係

記事では、引き続き、安全運転義務との関係で問題があるとの指摘を掲載しています。

(引用)
さらに、使用者の視界が妨げられたり、風でふらついたりしたことにより事故を起こした場合、安全運転義務違反に問われる可能性があるという。
これはその通りであるように思えます。

後に詳しく述べますが、私は、傘の骨が非常に危険と考えています。

運転者/歩行者の身長にもよりますが、場合によっては歩行者の目にヒットする高さで傘の骨を高速で振り回していることになり、安全運転義務との関係は勿論、事故が生じた場合の民事責任 - 失明の場合の賠償額は巨額になります - の上でもかなりリスクがある行為のように思えます。

安全運転義務違反については、今回の改正法における安全講習の対象となっており、2回の違反認定により講習を受けなければなりません。

この点は、法改正で取扱いの変更があったといえるところですが、傘についてピンポイントで狙ったものではありません。

普通自転車の車体サイズに関する規定との関係 - 普通自転車であったものが普通自転車でなくなるかどうか。

ここで疑問が生じるのが、傘固定をした場合に、当該自転車が普通自転車であるかどうかについて疑問が生じる点です。

(以下、平成25年7月28日付修正及び同月30日のフォローアップ記事を反映した内容)

普通自転車であるかどうかの区別が有する意味

この普通自転車であるかどうかは、自転車が走ることができる場所を決める上で、大きな意味があります。以下、簡単に説明します。

普通自転車の定義は、道路交通法において、次の通り定められています。
(自転車道の通行区分)
第六十三条の三  車体の大きさ及び構造が内閣府令で定める基準に適合する二輪又は三輪の自転車で、他の車両を牽引していないもの(以下この節において「普通自転車」という。)は、自転車道が設けられている道路においては、自転車道以外の車道を横断する場 合及び道路の状況その他の事情によりやむを得ない場合を除き、自転車道を通行しなければならない。
   (罰則 第百二十一条第一項第五号)
この記載から分かるとおり、法律では、「他の車両を牽引していない」という点以外は、内閣府令に丸投げしています。もっとも、これを読むだけで、宅配便等が利用している牽引自転車はこれに該当しないことが分かりますね。

では内閣府令はどうなっているのでしょうか。

(普通自転車の大きさ等)
第九条の二  法第六十三条の三 の内閣府令で定める基準は、次の各号に掲げるとおりとする。
一  車体の大きさは、次に掲げる長さ及び幅を超えないこと。
イ 長さ 百九十センチメートル
ロ 幅 六十センチメートル
二  車体の構造は、次に掲げるものであること。
イ 側車を付していないこと。
ロ 一の運転者席以外の乗車装置(幼児用座席を除く。)を備えていないこと。
ハ 制動装置が走行中容易に操作できる位置にあること。
ニ 歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がないこと。
このように、車体のサイズや構造によって定義されていることが分かります。

普通自転車の定義を踏まえたところで、この普通自転車にどのような意味があるのか。道路交通法は次の通り定めています。
(普通自転車の歩道通行)
第六十三条の四  普通自転車は、次に掲げるときは、第十七条第一項の規定にかかわらず、歩道を通行することができる。ただし、警察官等が歩行者の安全を確保するため必要があると認めて当該歩道を通行してはならない旨を指示したときは、この限りでない。
一  道路標識等により普通自転車が当該歩道を通行することができることとされているとき。
二  当該普通自転車の運転者が、児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められるものとして政令で定める者であるとき。
三  前二号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。
このように、普通自転車である場合、歩道通行が可能になるというのが最大のポイントです。

ここで示されている第17条第1項はいわゆる「車道通行の原則」。普通自転車に該当しない場合、車道を通行する義務があるという内容です。
(通行区分)
第十七条  車両は、歩道又は路側帯(以下この条において「歩道等」という。)と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。ただし、道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ない場合において歩道等を横断するとき、又は第四十七条第三項若しくは第四十八条の規定により歩道等で停車し、若しくは駐車するため必要な限度において歩道等を通行するときは、この限りでない。
したがって、普通自転車に該当しない場合、この標識があっても、歩道通行ができないことに。
PedestrianBikePathJapan
道路交通法63条4に定める、道路標識による自転車通行可の表示

By User:Geofrog (photo taken by User:Geofrog) [CC BY-SA 2.5 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.5)], via Wikimedia Commons

警視庁は、傘固定器具について車体サイズの問題(普通自転車に該当するか)ではなく、積載物のサイズの問題と考えている→傘のサイズは、普通自転車であるかどうかを左右しない

このように、普通自転車に該当するかは、車体サイズがポイント。

では、傘固定器具を用いて傘を用いたときに、自転車+傘のサイズが、車体サイズの制限を上回るとどうなるのでしょうか。

ちょっと、一見して明確ではありません。

この点について、東京都を所管する警視庁の説明パンフレットには、次の記載があります。



この14頁には、自転車傘立て器具について、明確に積載物として取り扱う前提の記載がなされています(上の図)。
傘立て器具が「積載装置」にあたり、傘はそれに積載される客体という考えのようです。

そうすると、この裏返しとして、普通自転車=車体サイズの問題 ではないと考えているように思えますが・・・

ちょっとよく分からなかったので、警視庁に問い合わせて考えを聞いてみました。

警視庁交通相談コーナー TEL 03-3593-0941(平日のみ/8:30~17:15)
質問事項は、
  • http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/bicyclette/jmp/bicyclette.pdf
    このパンフレットを読んだ。14頁には、固定装置に取り付けられた傘は、積載装置に載せられる積載物であるという記載がある。
  • 警察は、この固定装置を通じて繋いだ傘の部分は、歩道通行の規定(道路交通法63条の3及び63条の4)の適用を左右する普通自転車のサイズ(道路交通法施行規則9条の2)とは無関係と考えているのか。
  • これを敷衍すると、例えば自転車に様々なアタッチメントを介してパーツを付けた場合、それは車体の一部とは考えないことになるのか。
これに対する回答
  • 傘は積載物という理解。積載物の規定の適用があるほか、傘差しの場合の安全運転義務の問題が生じる。
  • 傘が車体と一体化しているとは考えられない。
  • アタッチメントを介して繋ぐ場合も同様(一体ではない)と考えられる。
  • 車体のサイズにかかわる普通自転車の規定の適用は別だと考えている。
という内容。ありがとうございます。

積載の制限に関する規定との関係(2) - 積載の問題とすることがはたして適切なのか?

この質問をした際に、
  • ボルトを介して繋いだらどうか、コードを介してがっちり固定したらどうか
  • そもそも本体の効用を向上させるものなのに、積載物として考えるのか
という疑問もありましたが、先方もお忙しいでしょうから、そこは飲み込んで打ち切りました。

回答から、警察はこの「一体」という要件をかなり厳密に見ていることが理解できます。

積載物の基準は一見厳しいけど、積載装置のサイズ次第

サイズだけ見ると、積載物の基準は一見とても厳しい。

大阪の規定は冒頭で示したとおり。東京も同様に、
積載物の長さ及び幅の限度は、 それぞれの積載装置の長さ又は幅に、0.3メートルを加えた長さ及び幅を超えないこと (上記警視庁パンフレット
と定められています。

ご説明した通り、普通自転車の幅は、60センチメートルを超えないこととされています。こっちのほうが、緩いですね。

積載物の基準に関して言えば、例えば一辺のサイズが10cmの固定装置に対しては、傘の大きさは40cmまで。積載基準を満たす傘って存在するの?という疑問はあります。

もっとも、固定装置を大きくすれば傘を大きくできることになります。これは元々、モノを載っける荷台的なのを想定していたからでしょうか。

普通自転車のサイズを規定した理由は歩行者の安全確保にあるのなら、傘固定器具をつかった固定でも、その趣旨はあてはまるはず

普通自転車のサイズを規定した理由は、
歩道を通行させることとする自転車について車体の大きさ及び構造に関する制限を加えて歩行者の通行の安全を確保すること (ジュリスト 669号 28頁 1978年7月15日発行 道路交通法の改正 田中節夫:警察庁交通局企画課)
とされています。

このように、歩道をシェアする歩行者の安全という趣旨からすれば、現在の警察の考え方、具体的には
  • 固定装置を介しているか一体化しているかで適用されるルールが違う
    固定装置を介していれば、その先の傘のサイズ自体は、車体のサイズとは無関係であり、普通自転車の該当性を左右しない。
  • そして、固定装置のサイズ次第では、普通自転車の制限より大きな傘であっても、積載の規制に抵触せず搭載できる。
というのは、疑問が残るところです。

固定装置を介そうが介しまいが、積載装置のサイズが大きかろうが小さかろうが、歩行者に与える影響は傘のサイズで決まる。

積載の基準を守ると傘の骨がちょうど目の高さに

私は、傘の危険性として、傘の骨の先端が他の歩行者の目の高さにヒットしかねない点が大きいのではないかと考えています。

しかも、傘の骨が他人の顔面にヒットする可能性は、積載の基準を守ることでより高くなります。

というのも、例えば東京都の積載の基準は、積載物のサイズについて
高さの限度は、2メートルからその積載をする場所の 高さを減じたものを超えないこと(上記警視庁パンフレット) 
と定めており、これを守ると、歩行者の顔面に傘の骨の先端が位置することになるからです。
上記警視庁パンフレットより作成

結論

警察の考え方は、あくまで積載サイズの問題であり、普通自転車の問題=歩道通行の問題 とは無関係ということ。

もっとも、積載の問題として考えても、現在使われている積載装置の多くは、ほとんど用をなさないでしょう。幅10センチの積載装置なら、直径40センチまで。実用にたえないように思えます。

そうはいっても、歩道通行をした際の危険性を考えれば、普通自転車の規定の適用の問題としないことには、やや疑問が残る。これが私の考えです。

4 件のコメント:

  1. 実は悩んで書いていない点が1点あります。それは、傘固定器具をつかって傘を固定した場合に、積載に関する規制と、車体サイズを基準とする普通自転車の規制が同時に適用されるか否か。荷物であれば車体でなく、車体であれば荷物でないとして、どっちか一方なんじゃないか?と思っている次第です。上記の通り私は車体とかんがえるのが自然と思っていますが、きちんと文献に当たれていません。素直に警察に聞くのもありかと思ってます。

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  2. 文献にあたるとともに、警視庁のwebから情報を得ました。

    http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/bicyclette/jmp/bicyclette.pdf 14頁
    「傘立て器具」を使えばそれは「積載装置」にあたり、積載の規定が適用されるという趣旨に読めます。

    ここでは、傘立て器具が積載装置にあたるという前提になっています。では傘をきちんと縛るなど固着させた場合(こちらのほうが固定は確実になります)は、やはり車体なのでしょうか。効用は全く同じではあります。

    そもそも、傘は運ばれる客体ではなく自転車の効用を増すためのツールとして用いられているのもの。積載装置を使えば積載物だというのはどうにも釈然としません。例えばマッドガードをアタッチメントを経由して装着すればそれは車体ではなくて積載物なのでしょうか?

    ちょっと謎は深まるばかりなので、電話して直接聞こうと思っていますが、今日時点では電話が繋がりませんでした。
    引き続き調べて見ようと思いますが、とりあえず本文は修正します。

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    1. 電話して聞いて見ました。傘固定装置を介した傘は車体にはあたらないという回答です。
      これについてはフォローアップ記事を掲載予定です。

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  3. 最近よくアクセスを頂くので、内容についてフォローアップ記事を反映させる方法で更新しました。
    ご指摘等ございましたらお気軽にお寄せ下さい。

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